海上の道 ― 沖縄版画ワークショップ

今月末に初めて沖縄に渡ることになった。

長い間、自分にとっての沖縄は、沖縄戦や米軍基地問題の苦悩の島々であるよりは、柳田国男の「海上の道」に描かれているような世界であり、「八重山」という信仰の場所であった。生まれ育った瀬戸内の島々の親しみやすさとは全く違った、根源的で立ち入り難い場所に思えて、これまで沖縄に行こうと思ったことはなかった。

1995年の米兵少女暴行事件の凶悪さと、その抗議活動の盛り上がりは覚えている。抗議活動により、普天間返還が合意されたはずなのに、いつの間にか辺野古にメガフロート基地を造って移転という話になったり、気がつくと埋め立てる計画に変わっていたのをやるせなく思っていた。その後、知り合いが関わっているゆんたく高江の活動によって、同じ沖縄東部の東村高江で、米軍ヘリパッド建設とその反対運動が行われていることを知る。

2013年には、前知事仲井真による辺野古埋め立て承認が行われた。この裏切りをきっかけとして、日本全体の平和や安全の状況が、階段を転げ落ちるように、悪化の一途をたどり始めたように思える。

政府と米軍は、この機を逃すわけには行かないと、強行的に工事を始めてしまった。辺野古・大浦湾の抗議活動に対して、海上保安庁が暴力的な弾圧を始めたことを知り、関わっているA3BCの活動の中で、辺野古と高江の基地建設反対の連帯バナーを木版画で共同制作し、沖縄に送った。高江も辺野古も座り込みの現場にそのバナーを張ってくれた。そして沖縄行きは決定的となった。

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ゆんたく高江Re:HENOKOの協力で、座り込みの現場で木版画ワークショップも開くことが出来そうだ。今日、事前に送るワークショップ用の道具をまとめた。苦手な飛行機の中で「海上の道」を再読してみよう。

ふたつの民衆=DIY芸術運動展

吉祥寺美術館で開催中の『われわれは〈リアル〉である 1920s -1950s プロレタリア美術運動からルポルタージュ絵画運動まで:記録された民衆と労働』展を見てきました。

REAL

芸術は「善悪の彼岸」にあるものなので、戦争画と反戦画、増産運動と労働運動が同列に並べられることは間違いではない。それが「リアル」なのだから。展示作品について、浜田知明、池田龍雄の作品はさすがに完成度が高かったです。民衆芸術ではなく、プロレタリア芸術でしたが、鈴木賢二の木版画も素晴らしいです。もっと民衆芸術の作品展示があっても良かったのではないか。しかし、最近の展示は薄暗くていけません。あと必要のないくるぶし程度の高さの柵。それほど知っているわけではないのですが、ヨーロッパやアメリカの美術館で柵があったのは「ゲルニカ」だけだった記憶があります。今回の展示で一番重要な雑誌。これは手にとって見るものなので、たぶんガラスの棚にいれてはいけません。ということで今回の展示の全貌を理解することは出来ませんでした。

ESPERANTO

Irregular Rhythm Asylumで開催中の『山鹿泰治展 —エスペラント・アナキズム・DIY』では貴重なスケッチブックを手にとって観ることができたので、展示の質はこちらのほうが確実に高いです。
とにかく、どちらの展示も今後重要となるDIY運動につながるはずですので、「社会とアート」や「DIY」に興味があるかたはぜひ観にいってください。