贋金つくり

贋金つくり」に主人公は居ない。三つの家族の愛憎と波乱含みの交流が描かれる。それを描くのはジイドではなく「贋金つくり」の題名で小説を書こうとしている小説家だ。しかし小説の中で小説はほとんど書かれることはない。結びの言葉だけは分かっている《まだこれで終わったわけではない……》。
物語は制作日記の中で進行していく。そこでは「贋金」に関する事件も語られるが、決してメインの事件ではない。贋金もクリスタルガラスに金メッキを施したという奇妙なものだ。登場人物たちは、自然科学から宗教、政治、経済、芸術までありとあらゆることを語る。ある意見に対しては、その反対意見も語られる。
小説は祖父の拳銃でこめかみを打ち抜く少年の死によって結ばれる。そこに小説の中の小説の結びの言葉は無い。しかしジイドは小説の中の小説家と同じように「贋金つくりの日記」を記述し出版する。
『悪貨が良貨を駆逐する』というグレシャムの法則も記述されるが、すべてが贋金だとしたらどうだろう。贋金にも悪貨と良貨があるのだろうか?贋物と本物を区別するその根拠は何だろう。贋の親子、贋の夫婦、贋の恋人、贋の友人。贋の貨幣。物語は《まだこれで終わったわけではない……》。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

two × 3 =