監獄と檸檬

大正から昭和にかけて、多く思想・政治犯を収監したという中野(豊多摩)刑務所。政治犯といえば、大正時代の爆弾テロや1970年代の爆弾闘争を思い起こす。最近は日本で爆弾のニュースを見ることは無いし、今世紀に入り、あのMachintoshでさえ爆弾を捨て去った。1983年に中野刑務所は閉鎖されて、今は平和の森公園になっている。東京オリンピックの話が出たころに、運動公園にする計画が立ち上がり、二万本近くの樹木を伐採して、競技用トラックや体育館を作り始めた。先日、寄ってみるとすでに競技用トラックも体育館も完成していた。公園がスポーツによって乗っ取られたのだ。体育館には「キリンレモン スポーツセンター」の看板が。レモンといえば梶井基次郎の『檸檬』ここでも〔黄金色に輝く恐ろしい〕爆弾だ。唯一残されているレンガ造りの中野刑務所正門にカメラをむけたら、自転車に乗った女性が目の前に停まって動かない。スマホを見ているだけかもしれないが、テロリズムを予感した。