山頭火を生きる:三月九日

春光うらゝかなり、陽はあたゝかく風はさむい。
けふも餅を焼いては食べた、まだ米はあるけれど。
風よふくな、鴉よなくな。
電燈屋さんが二人連れでやつてきたが、お気の毒様、庵には電燈もありません。
藪椿を活ける、水仙もよかつたが椿もよいな。
はじめて蛙を見た、蛙よ、うれしいか、とんでゐる。
やぶれかけた心臓が私に自然的節酒ができるやうにしてくれました。

 風ふく日の餅がふくれあがり
・水田も春の目高なら泳いでゐる
・眼は見えないでも孫とは遊べるおばあさんの日なた
・もう春風の蛙がいつぴきとんできた
・夕ざれはひそかに一人を寝せてをく
・山から暮れておもたく背負うてもどる

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