自由と壁とヒップホップ

フォークソングの勃興はアメリカにおけるユダヤ解放運動だと考えている。ボブディランもサイモン&ガーファンクルもユダヤ人だ。皮肉にも思えるが、現代のイスラエルにおけるヒップホップはパレスチナ解放運動と言えるだろう。かつて日本ではベトナム戦争のさなか、新宿北口広場でフォークソングの頂点を迎えた。それは日本における日本人の解放運動だったのだろうか。

中東の多くの国々では三〇歳以下の若者が人口の過半数を占める。高等教育が普及する一方で若年層の失業率は高く、政情不安や古い価値観との軋轢など、さまざまな生きづらさを抱えた若者たちにとって、高価な機材や演奏技術を必要とせず、路上でもインターネット上でも発表の場が見つかるラップ音楽は、自分たちの声を社会に届ける格好のツールとみなされる。くわえて、中東には詩や語り物など、口頭の言語芸術の豊かな伝統があり、今でもそれらが生活の中に息づいていることが、ラップを受け入れ、育む土壌になっている。
「ラップと中東の社会・政治変動」 山本薫
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ics/journals/2017ics21/16.yamamoto.pdf

山本薫さんといえば、 2011年5月28日に平井玄さんの「地下大学」で『タハリール広場からアズハル大学まで───エジプトの人びと』というトークイベントを素人の乱12号店で行った。東日本大震災と原発メルトダウンの影響で参加者は少なかったが、香港のプロテストが盛り上がっている今考えると、重要なトークだったのだ。
http://www.chikadaigaku.net/events/%e5%9c%b0%e4%b8%8b%e3%81%ae%e4%b8%ad%e6%9d%b1/

シオニストはユダヤ人に限らない
ユダヤ人がシオニストとは限らない
パレスチナ、ラーマッラー、西岸、ガザのために
そろそろインティファーダをグローバル化する時だ
(Lowkey『Long Live Palestine 2』より一部抜粋)

『自由と壁とヒップホップ』はどこだったか、小さな映画祭で観た。不動産屋の二階だったと思うが、どんどん記憶が失われていく。もう一度観たいと思う。