山頭火を生きる:四月廿九日

四月廿九日、暮れて八時過ぎ、やうやく小郡に着いた、いろ/\の都合で時間がおくれたから、樹明君も出迎へてゐない、労れた足をひきずつて、弱いからだを歩かせて、庵に辿りついた、夜目にも雑草風景のすばらしさが見える。……
風鈴が鳴る、梟が啼く、やれ/\戻つた、戻つた、風は吹いてもさびしうない、一人でも気楽だ、身心がやつと落ちついた。
すぐ寝床をのべて寝た、ぐつすりとゆつくりと寝た!
ふるさとはすつかり葉桜のまぶしさ
・やつと戻つてきてうちの水音
・わらやしづくするうちにもどつてる
・雑草、気永日永に寝てゐませう(病中)