山頭火を生きる:五月三日

五月の空は野は何ともいへない。
湿布とりかへるときなどは、もう一つ手がほしいな。
ぬかなければならない雑草だけぬく、衰弱した体力は雑草のそれにも及ばなかつた。
ありがたいたより(四有三さんから、桂子さんから)。
ちよつと街まで、たゞし、さうらうとして!
五月(サツキ)をはつきり感覚する。
歩けば汗ばむほどの暑さ、珍らしや雀どの、来たか。
おまんまにたまごをかけてたべる――老祖母のこと、母の自殺などが胸のいたいほどおもひだされる。……
友人からの送金で、ふとんを買ふ、それを冬村君に持つて来て貰ふ(夜、自転車で)。
ねむれない夜の百足が這うてきた
這うてきて殺された虫の夜がふける
日だまりの牛の乳房
草の青さで牛をあそばせてゆふべ
・てふてふつるまうとするくもり
暮れてふるさとのぬかるみをさまよふ