山頭火を生きる:五月十日

雨、風、朝酒が残つてゐた、しめやかな一日だつた。 ・いつまで生きることのホヤをみがくこと ・ひとりをれば蟻のみちつづいてくる ・草の青さできりぎりすもう生れてゐたか ・胡瓜植ゑるより胡瓜の虫が暑い太陽 風ふくゆふべのたど […]

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山頭火を生きる:五月九日

曇、昨夜は眠れた、何よりも睡眠である。 初夏の朝、よいたより。 ちよつと街へ出て戻ると、誰やら来てゐる、思ひがけなく澄太君だ、酒と豆腐とを持つて。 ちび/\やつてゐるところへ、呂竹さんが見舞に来られた、これまた茶を持つて […]

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山頭火を生きる:五月八日

曇、風(風はさみしくてやりきれない)。 弱い身心となつたものかな、あゝ。 ・山はひつそり暮れそめた霧のたちのぼる ・サイレンながう鳴りわたる今日のをはりの ・病みて一人の朝となり夕となる青葉 ・雑草咲くや捨つべきものは捨 […]

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山頭火を生きる:五月七日

まさに五月だ。 同朋園の田中さんから、たくさん薬を送つてきた、ありがたし、さつそく服用する。 街で買物、――洗濯盥、たどん、火鉢、鎌、等々。 山へ枯枝拾ひに、それから風呂へ。 △粟餅屋の小父さん、彼とはもう三度目の邂逅だ […]

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山頭火を生きる:五月六日

晴、朝は郵便を待つ、これあるがゆえの毎日でもある。 樹明来、胡瓜で一杯、さらに鯛で一杯、鯛は近来の美味だつた、さしみ、うしほ、そして焼いて、たらふく頂戴した、うまかつた、うまかつた。 寝苦しい、放下着。

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山頭火を生きる:五月五日

けさも早起、晴れて端午だ。 身辺整理、きれいさつぱり、針の穴に糸が通らないのはさびしかつた。 さみしくなるとうぐひすぶゑ(叡山土産の一つが残つてゐた)をふく、ずゐぶんヘタクソ鶯だね、そこが山頭火だよ。 放下着、死生の外に […]

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山頭火を生きる:五月四日

放下着、放下着。 やつぱり酒はうまい、雑草はうつくしい。 山口まで、湯田で一浴、廿日間の垢をおとす、おとなしく帰庵、ふとんのしきふをかゝへて(昨日から拾壱円ばかり買つた)。 山のみどり、鯉のぼりのへんぽん、蛙げろ/\。 […]

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山頭火を生きる:五月三日

五月の空は野は何ともいへない。 湿布とりかへるときなどは、もう一つ手がほしいな。 ぬかなければならない雑草だけぬく、衰弱した体力は雑草のそれにも及ばなかつた。 ありがたいたより(四有三さんから、桂子さんから)。 ちよつと […]

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山頭火を生きる:五月二日

五時を待ちかねて起床、晴、五月の朝はよいかな。 子の事を考へるともなしに考へてゐる、私はやつぱり父だ! うれしいたよりがいろ/\。 病人らしくないといつて樹明君に叱られるほど、私は不思議な病人だ、生きのこつたといふよりも […]

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山頭火を生きる:五月一日

早く起きた、うす寒い、鐘の音、小鳥の唄、すが/\しくてせい/″\する。 雑草を壺に投げす、いゝなあ。 身辺整理、その一つとして郵便局へ投函に。 私の身心はやぶれてゐるけれどからりとしてゐる、胸中何とはなしに廓落たるものを […]

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